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マレーシアは、2014年以来一貫してリタイアした人たちの海外移住先として世界でもトップクラスの人気の国の1つでした。
多文化を受け入れるお国柄と手頃な価格の生活が実現できるということに加え、長期滞在ビザなどを提供するプログラム「MM2H」の内容が充実していることが、人気の理由です。
しかし、昨年、その「MM2H」の取得条件を大幅に引き上げたため、アジアで最高の移住先という地位が陥落してしまいました。
そこで、今回の記事では、このことについてまとめました。
退職後移住先ランキングが大幅に下落
Living Internationalが、毎年、「グローバル・リタイアメント・インデックス」の最新2022年のランキングを発表しています。
2022年の最新のランキングでは、前年7位のマレーシアは、15位でした。
8つもランキングを落としました。
マレーシアの後塵を拝してきたタイが、11位にランキングし、アジア1位の王冠を手に入れました。
MM2H条件の大幅な引き上げ
現地のメディアによると、マレーシアが大きく順位を下げた理由は、昨年行われたMalaysia My 2nd Home(MM2H)の条件の大幅な引き上げであると報じています。
条件の引き上げについては、このブログでもなんども紹介していますが、その内容をおさらいすると、次のとおりです。
- 最低月収がRM40,000に増加(300%増加)
- 最低固定預金がRM1,000,000に増加(600%増加)
- 最小流動性要件がRM150,000,000に増加(400%増加)
- 年間ビザ料金がRM500に引き上げられる(600%増)
- MM2Hビザの有効期間が5年に短縮(10年から)
これまで、日本人にとって、マレーシアは、普通のサラリーマンでもリタイア後、海外移住できる国として人気がありましたが、この新条件をクリアできる人は、日本にどれだけいるでしょうか。
昨年8月にこの新条件が発表された後、既存ホルダーや関係団体、業界団体からの批判が相次いだ結果、マレーシア政府は、既存ホルダーに対しては継続条件を見直すことにしました。
しかし、新規申請者に対しては、多くの批判があるものの、担当内務大臣は、最近議会でこの新しい条件を維持することを再確認しました。
マレーシア政府はどうして条件を見直したのか
2017年頃から、マレーシア国内では、MM2Hを隠れ蓑にして、危険人物が入国し、国内の安全を脅かしているという議論が活発にされるようになりました。
この年、キム・ジョンナム氏の暗殺事件がマレーシアのクアラルンプール国際空港でありましたが、当時、逮捕された容疑者の男性の一人がMM2Hでマレーシアに移住した人物だったそうです。
一方、この時期に、MM2Hを取得して、移住してくる中国人も急増しました。
彼らの多くは、不動産投資のため、首都クアラルンプールやシンガポールに近いジョホールバルのコンドミニアムなどを購入しました。
こうした中国人たちに不動産を販売するため、不動産を購入すればMM2Hが無料でついてくるというサービスを多くの中国系の不動産業者がはじめました。
こうした業者たちは、一刻も早く、MM2Hが取得できるようにと、当時、申請手続きを行っていた観光芸術文化省 に猛烈な働きかけが行われたようです。
その際、裏金も使われたといううわさもあり、MM2Hの新規申請がストップした2020年6月には当時の観光芸術文化省のMM2H担当の幹部が理由も示されず更迭されました。
MM2Hの申請から仮承認までの期間は、3か月とされていますが、コロナ前の2019年頃、実際に、日本人が申請した場合、仮承認まで少なくとも6か月ほどはかかっていました。
当時は審査が厳しくなったと一般には考えられていましたが、中国人が優先された結果、日本人が後回しにされていたのではないかと勘繰ってしまいます。
また、偽造書類で申請をしてくるケースが多くなったり、犯罪歴のない妻が申請を行い、MM2Hを取得後、家族として犯罪歴のある夫が入ってくるといったケースが増加したそうです。
さらには、こうした形で入国した人たちが、マレーシア国内で犯罪を犯すケースが目立つようになりました。
極めつけは、2019年に、米国政府の要請を受けて、マレーシア政府は、マレーシア在住の北朝鮮国籍の実業家であるムン・チョルミョン氏をマネーロンダリングに関与したとして拘束しました。
その後、昨年2021年3月には、その身柄を米国側に引き渡しました。
実は、この人物もMM2Hを取得して、マレーシアに移住していたのです。
米国の取り調べによると、この件に関しては、多くの中国企業や個人も関与していたそうです。
この件を受け、北朝鮮とマレーシアは国交を断絶しました。
このような一連の事情からすると、MM2Hの見直しは当然かと思います。
しかし、残念ながらそのやり方は完全に間違っていると思います。
治安を乱す人物を排除したいのなら、審査を厳格化することや汚職の根絶を図る措置を行うべきで、取得条件の引き上げではありません。
取得条件の引き上げで解決しようとしたマレーシア政府の今回の姿勢は、自らの審査能力の低さや汚職の根絶できない体質を認めたようなものであり、安易な道を選んだと言わざるを得ないと思います。
マレーシアの損失
ある現地メディアが、新条件が発表された後、既存のMM2Hホルダーにアンケート調査を行ったところ、回答を寄せた500人のうち、新条件が実施された場合、わずか10人(全体の2%)だけがMM2Hを続行すると回答しました。
現在、マレーシアに移住している外国人たちの多くは、もはやマレーシア政府を信頼しておらず、多くの人がマレーシアを離れることを計画しているそうです。
既存ホルダーに加え、今後、マレーシアに移住することを考える外国人は激減することは間違いなく、経済的な損失は計り知れないものがあります。
現在、MM2Hはどうなっているか
昨年暮れからこの件に関してずーとウォッチしてきましたが、新条件での受付は、現在も行われていないようです。
2021年1月21日の担当大臣が記者会見で、2021年11月から新条件での申請受付を開始した結果、111件の申請があったとの発言があったことから、上記の記述を訂正します。
既存ホルダーに対しての「更新」は行われています。
既存ホルダーに対する更新条件は、これまでどおりで変更はありません。
まとめ
今回の記事は、いかがでしたでしょうか?
マレーシアは、東南アジアの国のなかでもかなりの親日国です。
街中や駅には、日本語表記があふれています。
是非、マレーシアには、制度の再考を行い、いつもでも普通の日本のサラリーマンがリタイア後、海外移住できる国であってもらいたいです。
MM2Hのこれまでの経緯を知りたければ、こちらの記事もご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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